ARITA NOW! ファーストスプーン 100日祝の笑顔のアイテム
桟美津子 自己紹介
1988年、結婚を機に陶磁器製造が仕事になった。
焼成を終えた窯の扉があいて、窯の周りの空気の温度は、一気にが上がる。焼き物たちを乗せた台車が引っ張り出される。小さな高い涼やかな音が響く。誰の手も触れたことのない真白な磁器の肌はきらきらと輝いていた。「なんてきれいなんだろう」と思ったのが、いけなかった。
その後、バブル景気は、はじけ、リーマンショックで経済はボロボロなのだから、もうからない窯の仕事は、止めればよかったはずだった。「安かとばしたほうが、もうかっとばい」と教えてくださる方もあったけれど、夫婦二人だけの小さい窯に、そんなおいしい話があるはずもありません。
1998年頃から、ろくろで生まれない形、赤絵に劣らない色を求めて工夫を重ね「てっぺい」シリーズを制作。
ドイツから、特許が切れた絵の具が日本国有田町にやってきて、約1,300度の焼成に耐える赤や、黄色が手に入るようになった。
どうやったらこの絵の具がもっと真っ赤になるだろう、どうしたら釉薬がめくれないで焼成できるだろう。そうこうしていたら、貧、貧いいながらも嬉々として仕事をしていた。はた目には怪しげなおかしな夫婦に見えていたと思う。
以降、下絵の具調合に工夫を重ねて、白磁に生える美しい色の釉下彩技法で、現在に至る。
釉下彩技法(ゆうかさいぎほう)
透明な釉薬の下に色顔料で装飾・絵付けをほどこした技法。現代化学と伝統工芸士の手技が可能にした色彩である。
この釉下彩技法が、私のライフワークになった。
2011年伊万里・有田焼伝統工芸士(下絵付け)の認定をいただく。
有田焼400年の歴史の中、かつての名工たちでさえ手にすることもかなわなかった絵の具の数々。
私は、その絵の具に工夫を加えて、美しい色を作っています。描くモチーフは、約1300度の高温に耐えてガラス質の釉薬の下で輝いて見えます。磁器ならではの透光性と発色です。
職人の伝統の技が、現代の素材から新しい有田焼を生み出したのです。
けれども、現実は厳しい。
上絵の具は、国際的な厳しい安全基準をクリアする必要が生まれ、商業的に大打撃を受けたにもかかわらず、釉下彩技法は、染錦にはおよばないという評価は、なかなか変わらない。
かなりの窯が釉下彩の商品で失敗し、結局釉下彩の絵付けをした後、低温で一回焼成してから釉薬をかけて高温で焼成する方法をとっている。だから、価格は高くなる。
それなら、赤絵のほうが良い、ということらしい。
かつて、古物の柄をアレンジした皿を作ったとき、「これは、○○窯(宮内庁御用達の有名な窯)のコピーじゃあないの?」って言われたことが忘れられない。「勉強してよね」と思いつつも、ブランドには、やはり敵わない、というのが現実。
だから、大手の窯がしない仕事にこだわっていく。小さい窯だからできることがあるはずだ。それが、釉下彩技法。
釉下彩技法の磁器の品は、電子レンジOK・食器洗い機OK・漂白剤使用OKで、普段使いに優れている。絵付けの上に釉薬がかぶさっているから、器が割れるまで絵柄は美しいまま。
どんな品にこの釉下彩の絵付けをしたら喜ばれるだろうと考えていた。
リスクが高くて、他の窯がやりたがらないもの、そしてまだ新しいもの、使う人が笑顔になるものがいい。
そんなときに、佐賀よろず支援の方から、ファーストスプーン有田焼のご提案を頂いた。
若い方たちに伝統工芸・有田焼を使っていただきたいと思い続けていた矢先でした。
どんな有田焼なら、若い方たちに使っていただけるのか。
【百日祝い・お食い初めの新習慣・有田焼ファーストスプーン】
この人生最初のお祝いを、
「より多くの方が体験できるように」
「より現代的なスタイルで」なおかつ、
「日本ならではのスタイルで」
そして、白い黄金とまで言われた磁器の存在感を高める1品として、
「お食い初め」にプラスのアイテムとして、あるいは単独でも価値のある有田焼・
磁器のファーストスプーンの制作・販売を。
やってみよう、そう思いました。
スプーンの歴史で代表的なヨーロッパの伝統 「銀のスプーン」
―幸せを呼ぶお守りとして 知られているー
特権階級の富を象徴することから、一般の人々も子供が生涯食事に困ることがないようにとの願いを込めて、子供の誕生に銀のスプーンを贈るようになりました。
「有田焼ファーストスプーン」
磁器ファーストスプーンには、子供の成長を祈願し寿ぐ縁起模様等を施します。
そして、落としても割れない銀のスプーンとは違い、大切に使われて次世代に残して
いくことで、かけがえのない家族の記録にもなっていきます。
【百日祝い・お食い初め】は、赤ちゃんの誕生・成長を祝う人生で最初のイベントです。
有田が持つ陶磁器技法/絵付け・成形の技術を用いて、記念日のメモリアルな新商品としてファーストスプーンを作成いたします。現在市場では、国内伝統工芸品のポジションを見渡してもこのレベルで競合する品はありません。
企画中のこの品は、形状の仕上げは手作業で、陶磁器ならではの柔らかな口当たりで、子供たちにもその感触を実感していただけます。
この小さなスプーンから、有田焼の美しい模様には、心や願いが秘められていることを、知っていただき、佐賀県・有田焼食器の魅力の宣伝につながる事を期待します。
有田焼は、国内で最初の優れた磁器として歴史に刻まれています。また、世界的な評価も頂いております。
現代を生きる伝統工芸士として「生活の中に生きる伝統工芸品」を、創り出していくこと、世界遺産にもなった和食の文化として、若い方の関心を集める有田焼を作っていくこと、そのために「伝統の半歩先を」と創意工夫に励んでいます。

■釉花彩